OL 万千湖さんのささやかなる野望

 万千湖は鼻歌を歌いながら、ポットに水を入れている。

 駿佑はページをめくってみた。

 気のない素振りで、ゆっくりと。

 だが、万千湖が今にも、
「見ていただいてありがとうございます~」
とか言って、ひょいと持って行ってしまいそうなので内心焦っていた。

「課長~」

 間の抜けた万千湖の声が、リビングと続きになっているキッチンから聞こえてきた。

 駿佑は慌てて適当に眺めているフリをする。

 だが、万千湖は顔を上げて、こちらを見ることもなく。
 珈琲が入っているらしき缶を開けながら、訊いてくる。

「珈琲、濃い方がいいですか?」

「い、いや、特に……」

 そうですか~という万千湖の声を聞きながら、駿佑は急ぎページをめくってみた。

「あ」

 ひっ。