OL 万千湖さんのささやかなる野望

 

 食事のあと、瑠美が言っていた前の職場の男が気になって訊いてみた。

「ああ、プロデューサーの黒岩さんです。

 ……って、昼間、言いませんでしたっけ?」

 いや。
 お前は俺をじっと見つめてきただけで、なにも口から発してはいないが……。

『プロデューサーの黒岩さんです』は例え百年ともに暮らしても、視線だけで読み取ることは不可能だろう。

 そこで駿佑は万千湖が淹れてくれたお茶を一口飲んだ。

 えっ? と驚く。

「美味いじゃないかっ」
「あ、ありがとうございますっ」

「お前のことだから、ペットボトルで出してくると思ってたんだが」
と言うと、万千湖は苦笑いし、

「いや~、そんなときも多いんですけどね~。
 今日は、ちょうどいいお茶があったので」
と言う。

「そういえば、お茶の淹れ方が上手いというので、部長に息子と見合いしないかと言われたんだったな」