OL 万千湖さんのささやかなる野望

 

「あのカレー屋は人を殺そうとしていますっ」

 青い大きな雁夜の車にみんなで乗ったあと、万千湖はそう叫んだ。

 ははは……と苦笑いした雁夜が同情気味に言ってくる。

「大丈夫? 白雪さん。
 コンビニ寄ろうか?

 ご飯、サラダしか食べてないよね?」

「いえ、大丈夫です。
 激辛カレーのあとの昔ながらの苺のショートケーキ。

 涙が出るほど美味しかったですっ」

 ……ほんとうに泣くかと思った。

 あの店にはすっごい激辛、普通に激辛、ちょっぴり激辛、のカレーと何種類かのケーキしかない。

 ケーキはきっと、ご褒美なんだな。
 頑張って激辛カレーを食べた人間への。

 ……まあ、私はちょっぴり激辛なうえに、ほとんど食べてはいないんだが。

 っていうか、普通に激辛って、激辛はなにも普通じゃないですよっ、と万千湖は今でも胃が痺れるような、あの辛さを思い出しながらメニューにケチをつけはじめる。