OL 万千湖さんのささやかなる野望




 そこはごく普通の昔からある喫茶店だった。

 明るい日差しに、窓の外からは鳥のさえずり。

 のどかだ……。

 何故、この喫茶店で激辛カレーなんて極悪なものを……と思いながら、万千湖は遠い目をして眩しい窓を見つめる。

 店内に漂うカレーの香りがすでにヒリついていた。

 平和そうに歩いているサラリーマンが目に入る。

 いや、平和そうに、というのは万千湖の主観だが。

 今すぐ居場所を取り替えたくなる。

 だが、彼はあっという間に通り過ぎていってしまった。

 窓から見える通行人たちに、万千湖は、心の中で、

「辛いものはお好きですか?」

「激辛カレー、食べませんか?
 おごりますよ」
と話しかけていた。

 特に辛いものは苦手でないらしい瑠美が小声で、
「緊張するわね、イケメン課長が二人も前にいると」
と言ってくる。