「万千湖っ」
次の日の朝、給湯室で昨日帰りに買ったいい香りの紅茶を淹れていると、瑠美がやってきた。
「昨夜、夢にあの方が出て来たのよっ」
……誰ですか、あの方って、と思いながら、万千湖はマイカップからティーバックを引き上げる。
「私の背後に影のある表情をして、あの黒いコートを着て立ってたのよっ」
それ死神かなにかですかね……。
「運命かもしれないわっ」
と瑠美は言い出す。
「黒いコートって、もしかして、黒岩さんですか?」
「黒岩さん、名前まで素敵ね。
いいわよね、影のあるイケメン」
あの人の場合、常に疲れているからそう見えるだけでは……と思いながら、万千湖は訊いてみた。
「じゃあ、週末行かなくていいですか」
「なに言ってんのよ。
それはそれよ、行くわよ」



