OL 万千湖さんのささやかなる野望




「ほう。
 この半年でもう、男と家をな」

 そんな黒岩の呟きを、なにかいろいろと誤解があるようだ……と思いながら、万千湖は聞いていた。

「大抵のやつは、一度はこの世界を離れても戻ってくる。
 実際、『太陽と海』の他のメンバーもそうだ。

 お前だけだ。
 半年間、泳がせているうちに、別の場所にどっしり根ざしてしまったのは」

 いや、泳がせてるうちにって、犯人か……。

「……お前たちで、やりたいことがまだまだあったんだがな」

 黒岩は遠くを見ながら、ぽつりと言った。

 せめて、お前たちと、と言ってください……と思いながらも。

 私たちを引っ張っていってくれた黒岩さんに、もうちょっと恩返ししたかったな、とも思っていた。

「まあ、よくわからんが。
 ともかく、騙されるなよ。
 なんだかんだで、お前たちは箱入りだから、心配だ」
と親のような、兄のようなことを黒岩が言い出したので、しんみりとする。