900万か、1800万か、決められないまま、万千湖は駅前の100均に行っていた。
ここで新生活を思い描いてみよう、と思ったのだが、小物ばかりで、なんとなく浮かばなかった。
でも、ソファとかテーブルとか、すでに全部そろってるみたいだしな~。
ホームセンターに行ってみようかな。
それで、素敵なラグとか見てみよう、と思ったとき、300円のちょっと小洒落たビンゴゲームを手にした黒いコートの男が呼びかけてきた。
「マチカ……」
ひっ、黒岩さんっ、と緊張する。
今日は忘れ物はありませんっ、と昔の癖で思ってしまった。
「お前、この近くに住んでるのか」
「はいっ。
黒岩さんは?」
「撮影について来たんだが。
社内のイベントでビンゴゲームやるらしいんで、買いに。
暇な時間があるから、買って来てやろうかと言ったら、新田が驚いていた」
ああ……と万千湖は苦笑いする。
前はそんな感じに気の利く男ではなかったからだ。
丸くなったな、黒岩さん、と万千湖は思う。



