OL 万千湖さんのささやかなる野望

「お前は俺と家を買うのか? アイドル」

 アイドルは名前じゃありませんが。

 っていうか、この人の口からアイドルと出るたび、(おとし)められている気分になるのはどうしてだろうな……と思いながら万千湖が口を開こうとしたとき、駿佑が言った。

「まあ、俺の名前で当たったんだから。
 俺と結婚するか、俺と住むかのどちらかでないと、お前は住めないんだが」

 万千湖は開いた扉の向こう、人通りのない廊下を見ながら、一瞬考え、言ってみた。

「……では、課長と結婚して、私だけが住むとか」

「待て。
 何故、俺を追い出そうとする……」

 あー、いえいえ、と万千湖は苦笑いし、慌てて手を振る。

「もともと私が住宅展示場に行きたいと言ったから、こんなことになったわけで。
 巻き込んだら申し訳ないかな~と」

 遠慮だったんですよ、と駿佑に睨まれ、万千湖は言った。