OL 万千湖さんのささやかなる野望




 ……マチカ。

 マチカって、なんなんだろうな、と駿佑は思っていた。

 昔、他社の営業さんがうちの女性社員をうっかり源氏名で呼んで、彼女が夜の街で働いていたことが発覚したことがあったが。

 こいつはとてもではないが、夜の街では働けそうにもない。

 まず、色気がない。

 ……あだ名かな?
 万千湖で、マチカ。

 あまり変わりがなくて、わざわざあだ名にする意味がわからんな、と思いながら、五人でロビーのソファに座り、喫茶から持ってきてもらった珈琲を飲む。

 少し話した。

「ビックリしました~。
 僕の見合い相手、マチカさんだったんですねっ」

 記念に見合いすればよかった~、となんの記念なのか、そう言って、部長の息子、景太郎(けいたろう)は婚約者の女性に、こらっ、という顔をされていた。

「すみません、握手してください」
と景太郎は万千湖に握手をねだる。

 万千湖は、
「応援ありがとうございました」
と言って、その握手を受けていた。

 頭の中で、変な蛍光色のジャンパーを着た万千湖が街頭に立ち、握手をしていた。

 こいつは実は政治家だったのだろうか。

 ……変な法案とか通しそうだ、と思う駿佑の頭には、万千湖が芸能人という発想はまったくなかった。