OL 万千湖さんのささやかなる野望

「なんでだ」

「……えーと。
 実家、建て替えるので」

 ほんとうはクレープにつられて行っただけだったんですが。
 1800万円の買い物をしてしまいましたよ。

 恐ろしいクレープだった……。

 タダより高いものはないというのは本当だ、と思う万千湖に、黒岩が訊く。

「実家?
 お前、今、OLになって一人暮らししてるんだろ?」

「はい。
 すべて黒岩さんのおかげです。
 ありがとうございます」

「いや、新田(にった)が知り合いの会社で中途採用の試験があると教えてくれただけだから」

 新田というのは、黒岩が喧嘩して飛び出した相手だ。

「お前は大学もそこそこのところを出てるし。
 俺は試験があることを教えただけだ。
 あとは自分の頑張りだろ」

 親に、いつまでアイドルで食べていけると思ってんの、とお尻を叩かれ、忙しい中、頑張って、それなりの大学を卒業したのは無駄ではなかったようだ。

「……でも、黒岩さんや新田さんに採用試験があることを教えていただけたから、試験受けられたわけですし」

 ほんとうにありがとうございました、と万千湖は見えていないだろうが、頭を下げる。

「まあ、確かに、縁って大事だよな。
 最近、しみじみそう思うよ」

 最初の頃に比べて、ちょっとだけ丸くなった気がしないでもないでもない黒岩がそんなことを言う。

 なんだかんだで、どうしているか心配になって、みんなのところにかけているのかもしれないなと思った。