OL 万千湖さんのささやかなる野望

 もう一緒に仕事をしているわけでもないのに、またなにか怒られるのではっ、と怯える。

「おはようございますっ。
 お疲れ様ですっ」
と言いながら、万千湖は慌ててロッカールームに引き返した。

 え? 今、昼だよ、という感じに、通りすがった綿貫が見ていたが、昔の癖だ。

 芸能界、いつでも、おはようございます、は都市伝説ではなかった。

「サヤカが活動再開したの知ってるか」

 唐突に黒岩はそう言ってきた。

「は、はい。
 この間、たまたま住宅展示場で会いまして」

「……住宅展示場? なにやってるんだ、お前は。
 風船でも配ってたのか」
と言われる。

 この人の頭の中では、私、うさぎの着ぐるみとかに入ってそうだな、と思いながら、万千湖は言った。

「いえいえ、家を見に行ったんです」