OL 万千湖さんのささやかなる野望




 お昼休みが終わる頃、出先で食事を済ませ、戻ってきた雁夜が給湯室に行くと、女子社員たちが話しているのが聞こえてきた。

「そうだ。
 最近、途中入社してきた白雪さんってさ」

 ん?
 マチカの話? と雁夜は乳酸菌サプリを手にしたまま足を止める。

「フィンランドに彼氏がいるらしいよ」

「えー、そうなんだー」

「それで、フィンランドの時間を知るために、腕時計をふたつつけてるんだって」

 実は、社食で話を聞きかじった人が、『フィンランド』と『好きなので』しか聞いていなかったのだ。

 万千湖が聞いていたら、
「それだと私の彼氏はムーミンになってしまいますっ」
と叫んでいたことだろう。