OL 万千湖さんのささやかなる野望

 よく我々のことも怒っていたが、そもそも気の短い人だった、と万千湖はプロデューサー、黒岩兼人(くろいわ かねと)のことを思い出す。

 勤めていた大手芸能事務所を喧嘩して飛び出し、実家に戻っていたとき、たまたま、あの商店街のイベントがあったのだ。

 近所のじいさんに甘味処で汁粉をおごられ、その恩により、働かされていたようだ。

 ああいう人でも、地元で昔世話になったじいさんたちには頭が上がらないらしい。

 実際、彼はかなりの敏腕プロデューサーで。
 右も左もわからない商店街出身の少人数ご当地アイドルを全国でもそこそこ名が売れるまでに引き上げてくれた。

「お前たちのおかげで忍耐力がついた」
と言っていた黒岩は、前の事務所で喧嘩した人に、

「暇になったのなら、戻ってこい」
と言われ、反発することなく、戻っていった。