OL 万千湖さんのささやかなる野望

「私、それで日記を書きはじめたのかもしれません」
と万千湖は言った。

「今度は全部書き残しておきたくて。
 どんな小さな楽しいことも」

「……そうか。
 じゃあ、待っててやるから、書いてこい、日記」

 ありがとうございます。
 でも、大丈夫です、と万千湖は笑った。

「スマホにメモしときますから。
 えーと、昨日……、

 昨日、なにかありましたっけね?」
と万千湖は小首を傾げる。

「……いっぱいあっただろう」

「あっ、そうだっ。
 住宅展示場に植えてあったコキアが真っ赤に紅葉してて、ふわふわで綺麗だったですっ」

 そのとき、視界にあの宝くじ売り場が入った。

 万千湖は思わず、身を乗り出すと、通り過ぎていく宝くじ売り場を振り返り見つめた。

「『やっぱり、一等出てました』とか、看板出てないですかね~?」

「待て」
と駿佑が言う。