OL 万千湖さんのささやかなる野望

 


 酒臭い車内の窓を全開にし、万千湖たちは出発した。

「うわ~、手に荒縄で縛られたようなあとがっ」

 赤く痣のようになっているおのれの手首を見ながら万千湖は叫ぶ。

「ようなっていうか。
 荒縄そのものだったが……」

 会社に行く前に、家に戻って着替えなければならないのだが、もうかなり時間がヤバイ。

「ある意味、お前と心中だな。
 二人で遅刻とは……」
と駿佑が呟く。

「あの、私はその辺に落としていってください。
 自力で帰りますので」
と言ったが、どうせ帰り道だからいい、と言われる。

「待っててやるから、さっと着替えてこい。
 その代わり、俺が着替えるのも待っててくれ」
と言われた。

 はい、すみません、と言いながら、万千湖は頭の中で走って家に入り、スーツに着替えるまでのシミュレーションをする。

 そして、気づいた。

「あ、そういえば、車で寝てしまったので、昨日のこと、日記に書けませんでした」

「毎日、日記書いてるのか」

 感心だな、とちょっと褒められる。