OL 万千湖さんのささやかなる野望




 ああでもないこうでもないと話し込んでいるうちに、日も暮れ、対岸の工場の灯りや船の灯りがくっきりと見え始めた。

 噂の美しい港の夜景がじわじわ現れてくるのを眺めながら、車の中で万千湖は言った。

「あっ、見れましたね~、夜景。
 せっかくなんで、外出て、呑みませんか?」

 もう車は引きずっていくことにして、と言って笑う。

「冷えてないぞ」

「やっぱり、クーラーボックスと氷買ってくるべきでしたね。
 それで、プラコップも買ってきて、二人でクーラーボックスを眺めながら、じっと待ちましょう」

「いや、夜景を眺めろ」

 お前はいつも眺めるところがおかしい、と言われながら、近くのコンビニで氷ではなく、冷えたスパークリングワインのミニボトルを一本ずつ買ってくる。

 たぷたぷ打ち寄せてくる黒い海を見下ろしながら、二人でそれを呑んだ。