OL 万千湖さんのささやかなる野望

 正気になった駿佑が車を出そうとしたとき、車の前に、さっきの清水が飛び出してきたのだ。

 ひいっ、当たり屋っ、と思ったのだが、清水は半泣きで、待ってくださいっ、と手を振っている。

 駿佑が窓を開けると、
「すみませんっ。
 もう一度、モデルハウスご覧になりますか? と訊くのを忘れてましたっ」
と叫ぶ。

 自分たちが帰ったあとで、上司にモデルハウスに案内しなくてよかったのか、と訊かれたそうだ。

 忘れてましたと素直に言って、叱られたらしい。

 せっかく来てくれた清水に悪いので、二人は当選したモデルハウスをもう一度見に行った。

 美術館か劇場の入り口かな? と思ってしまうような広くて高さのある玄関ホール。

 女王様がほほほほ、と扇をはためかせ、下りてきそうな湾曲した階段が左右にある。

 その階段を上がっていったら、大ホールがあって、オペラとか開幕しそう雰囲気だった。

 大変素敵だが、一般庶民は自宅にこんなものがあったら、戸惑うな……。

 万千湖は仕事を終え、この家に帰ってくる自分を想像してみた。

 ……家に対して、自分がショボい。