OL 万千湖さんのささやかなる野望

 駿佑が早めにラジオをつけた。

「何処でやるんだったかな」
と言いながら、いろいろ局を変えていると、英語講座みたいなのが流れてきた。

 それを聞きながら、万千湖は言う。

「英語習い始めたばかりの頃、問題集とか見て、思ってませんでした?

『私はダンサーですか?』とか。
『私は名古屋出身ですか?』とか。

 ……この人、記憶喪失なのかなって」

「英語の最初の方、いつもそんな感じだろ」

 車内中にハンバーガーやポテトやアップルパイの匂いが充満していた。

 幸せの香りではあるが、食べ終わる前に満腹になりそうな匂いだったので、二人とも、少し窓を開けてみた。

 海の風が吹き込んでくる。

 行き交う船や対岸の工場を見ながら、万千湖は言った。

「此処、夜景が綺麗らしいですね」

 駿佑は一瞬、黙ったあとで、

「……そうか」
と言う。

 やがて抽選のある番組がはじまった。