OL 万千湖さんのささやかなる野望

 


 危ないとこだった……。

 木の向こうに行った万千湖は、まさにこちらに向かい、来るところだった彼女の両腕を正面から、つかんで止める。

「サヤカさん、なんでこんなところにいるんですか?」
と訊くと、サヤカは、えっ? と動揺した。

「ちょ、ちょっといい天気だったから、寄ってみただけよ」

 だが、そのサヤカのTシャツの胸許には、ヒーローショーのロゴがあった。

 万千湖の視線を追うように、視線を下げたサヤカは渋い顔をし、

「……実はこの特撮の大ファンで追っかけしてるのよ、私」
と言ってきた。

 初耳です、と苦笑いしながらも、万千湖は突っ込まなかった。