OL 万千湖さんのささやかなる野望

「かっ、課長っ。
 私、お手洗いに行ってきますっ。

 先に見ていてください。
 どの家にされますかっ?」

 切羽詰まった口調だったが、場所が場所だけに、不審にも思われなかったようで、

「じゃあ、一番奥の家に行くから」
と言ってくれた。

「ありがとうございますっ。
 すぐに追いつきますっ」

 なにがありがとうございます? と思われたかもしれないが、万千湖は走って木々の向こうに駆け込んだ。

 あっちから自分の許にやってこないように。