OL 万千湖さんのささやかなる野望

「……もうちょっと見てくか?」
と問われ、はい、と万千湖はキッチンカーの側にあったゴミ箱にゴミを捨てに行った。

 すでに食べ終わっていた駿佑は建ち並ぶ家を眺めている。

 どれに入ってみようかと思っているのだろう。

 意外に楽しんでもらえてなによりだ、と思いながら、
「ご馳走様でした~」
と片付けをしているキッチンカーの人に挨拶して、にこやかに挨拶を返されたそのとき。

 キッチンカーの後ろの木々の向こう、木陰のベンチに座っていた女性と目が合った。

 茶髪でウェーブのついた髪をツインテールにしている。
 着ているTシャツには、ヒーローショーのキャラのロゴ。

 なにかの気配を感じたのか、木越しに振り返った彼女もこちらに気づいてしまった。

「マチ……ッ」

 ひっ、と万千湖は息を呑む。

 彼女に背を向け、走って駿佑の元まで戻り、その腕を軽く叩いた。

 駿佑が振り返る。