OL 万千湖さんのささやかなる野望




 万千湖は念願のクレープを堪能しながら、ミニSLに乗ってはしゃぐ子どもたちを見ていた。

 いい天気で緑も多い長閑な住宅展示場。

 一回目ヒーローショーはもう終わったようだった。

「おいしいですね。
 こんなものをタダでとか。

 買ってあげないといけない感じがしますね」

「……クレープを?」

「家をですよ」
と目の前の大きな二世帯住宅を見ながら万千湖は言う。

「高いクレープだな。
 その辺でクレープ買った方がよかったんじゃないか?」

「そうですね~。
 美味しいですね、この出店してるお店。

 今度行って買いたいですね」
ともう限定100食売り切って店じまいしているキッチンカーを振り返る。

「そういえば、さっきの住宅展示場のアンケート、課長が答えてくださったんですよね。

 モデルハウスお譲りします、希望しますに丸されてましたけど」