OL 万千湖さんのささやかなる野望

「あのあと、いろんな住宅展示場のイベント、ネットで見てみたんですが。
 最近のは、何処もすごいみたいですね。

 ヒーローショーとかだけじゃなくて。
 動物園や水族館みたいになってたり。

 楽しみですね」

「そうだな。
 お前んちの実家を建て替えるんだったか?」

「そうなんですよ~。
 私の部屋も作って欲しいんですが。

 もう無理でしょうね」
と万千湖は笑う。

「実家に戻る予定があるのか?」

「いや、ないんですけど。
 まあ、今、一人暮らし満喫してるし。
 もしかしたら、いつか結婚するかもしれませんしね」

 そう笑って万千湖は言った。

 こいつは俺と見合いしたことをすっかり忘れているようだ、と思うと同時に、頭に昨日の夢が浮かんだ。

 万千湖が雁夜にクマの腹巻を編んでやっている夢だ。

 なんで今、あの夢が気にかかるんだろうな、と思いながら、駿佑は万千湖に訊いてみた。

「そういえば、この間古書店でなに買ってたんだ?
 古い本みたいだったが」