別にうらやましくなんてない。
そんなことを思いながら、日曜の朝早く、駿佑は万千湖を迎えに行った。
万千湖はマンションの前に出て待っていてくれたが。
こちらに気づいた万千湖は笑顔で手を上げかけたが、そのままフリーズする。
なんだ、その半端な仏像みたいなポーズは、と思った駿佑は乗ってきた万千湖にそのままのセリフを言った。
「なんだ、その半端な仏像みたいなポーズは」
いや~、と苦笑いし、万千湖は言う。
「あれ、たぶん課長の車だな~と思ったんですが。
ちょっと自信がなくて。
違ったらどうしよう、と思って、上げかけたまま手を止めてしまったんです」
「じゃあ、ついでに下ろせ」
「はいっ、次回から気をつけますっ」
次回も俺かどうかわからずに、途中で止まる気か、と思う駿佑の横で、
「いや~、楽しみですね~」
と言いながら、万千湖はガサガサあの住宅展示場のチラシを出していた。



