私と瑛理もふたりの子宝に恵まれた。上のやんちゃな女の子・理名、下の食いしん坊な男の子・大夢。
瑛理はもうひとり欲しいみたいだけど、今はまだ考えられない。なにしろふたりを保育園に送って仕事をして、夕方迎えに行って家事をしてという毎日は想像以上にハードだから。

瑛理もかなり協力してはくれるけれど、どうしても忙しい時期はある。近くに住んでいる家族の協力が得られるだけ、私はありがたいとは思う。
でも、毎日くたくたで頑張っていると、まだ三人目には踏み切れないというのが本音だ。

「ままー、これであそぼー」

理名が塗り絵を持ってやってくる。うーん、夕食の後片付けをやってしまいたいんだけどなあ。

「もう少し待っててくれる? っていうか、理名、あと三十分で寝る時間だよ」
「やだぁ、やだもーん」

ぷりぷり怒り出す娘。一方、洗い物のために背負おうと思っていた息子が抱っこ紐から脱走する。ハイハイで逃げていく息子を慌てて追いかけた。

「こら、待て待て」
「ままー! りな、まだ寝ないよー!」

ああ、育児も家事も大変。楽しいし幸せだけど、なかなか自分の時間が持てない。
すると、玄関ががちゃりと開く音がした。

「あ、ぱぱだ!」

娘が塗り絵を放り出して玄関に駆け出す。すぐに娘を抱っこした瑛理がリビングに姿を現した。

「柊子、ただいま。理名、大夢、いい子にしてたかぁ?」
「してたー」
「あー」

うーん、今ちょっと駄々をこねかけたけどねえ。とはパパに密告しないでおく。

「おかえりなさい。ごはん、食べるでしょ」
「ああ、もう腹ペコ。でも、理名と大夢、そろそろ寝る時間だよな。先に寝かしつけしちゃうよ」

瑛理が当たり前と言わんばかりに神様みたいな提案をしてくれる。