~桜燐楼~(おうりんろう)

宴たけなわの頃、トイレから帰ってきた武志が部屋に入ると、秀樹が立ち上がった。

『え~、みんな、ちょっと静かに。実は、この同窓会は、独身者にしか声をかけていないんだなぁこれが。そこで、サプライズイベントを用意したぞ。』

男性陣がざわめく中、女性陣は少し静かになった。

(これが、目的か。まったく。自分へのサプライズじゃないのか?秀樹のやつ・・・)

武志は内心つぶやいていた。

そして、とりあえず、入り口近くのガイドが座っている隣に腰を下ろした。

『あらかじめ、女性陣には、本日の参加資格として、卒業式の日に、我々からもぎ取ったボタンを持って来るようにとお願いしてある。』

男性陣から拍手が上がる。

これは・・・ほとんど合コンであった。

『今から、隣の部屋にこの袋を置く。袋にはそれぞれの男どもの名前が書いてあるので、女性は、一人ずつ隣へ行って、ボタンを持ち主の袋に入れてくれ。』

(ほんとに、こういうことだけは、昔から良く頭の働くやつだ。)

『ボタンには小さく彼女たちが名前を書いてる。ここからが、肝心だぜ。』

幹事さんがもったいつける。

『そのあと、例の「恋人の木」へ行き、そこで、男性陣にそれぞれの袋を渡す。

確か、あの桜の木は、二人の思いが変わっていない証として、花を咲かせるという話しだ。

見事花が咲いたらその二人も、うまくいくかもってことだ。

後はそれぞれに任せるので、どうぞご自由に。』