夏の天気は変わりやすい。
署を出た時はポツリポツリだった雨。
現場に着いた頃には激しい雷雨となっていた。

「警視庁の富士本だ」

「し、失礼しました。どうぞこちらへ」

手帳を見た警察官が、慌てて敬礼する。

「はぁ〜、全く」

一瞬、後ろの咲を見てため息をつく。

「被害者は?」

分かりつつ無視する咲。

「えっ…あ、はい。確認できてませんが、まだ子供の様です」

(まさか⁉️)

「銃声がしたとの通報があり、着いた時には暴行を受けた状態で、ゴミ捨て場に。今救急車が到着したばかりです」

豪雨のせいで遅れた救急車に、被害者を乗せるところであった。

「待って!」

傘を捨てて走り寄る咲。
後に二人が続く。

「ちょっと君、なにを…」

ストレッチャーの上の被害者を見る。

「違った…」

「邪魔しないでください!」

救急隊員に引き離される。
富士本が手帳を見せて、容体を確認する。

救急車が去って行く。

「酷くやられてるが、命に別状はない様だ」

「しかし、パチンコに負けたぐらいで、河内組に撃ちますかね、中学生が?」

「昴、なぜ中学生って?」

「これを暴行を加えたヤツが持ってました」

昴が財布を開き、中から学生証を出す。

「倉田剛…」

「目には目をってやつか、流石に殺しはしなかったか」

「富士本さん、でも草彅慎吾は、殺されましたよ、しかもあんな酷い状態で」

確かに、咲もそう思った。
(もしかして…)

「慎吾を殺すつもりは無かったのかも…」

「えっ?」

「バスから、七海に気付いた彼は…」

慎吾の真理を考える。

「早退した彼女を心配してた彼は、バスの窓を開けて、身を乗り出して手を振った…」

「恋人なら、やりそうなことですね」

「そこへ、豊山のトラックがぶつかってきて…か。なるほど、あれは不運な事故…か」

咲の携帯が鳴る。
三上からであった。

「分かりました。こちらの被害者は、倉田剛。一応…無事です。拳銃も押収しました」

「三上か?とうとうお前を認めたようだな」

「伊藤沙織は、無事に家にいるそうです」


河内組の事務所には、一人しかおらず、駆けつけた警察官により逮捕されていた。