〜JR千種駅前〜

名古屋独特の蒸し暑さ。

ノースリーブのヘソ出しスタイル。
薄手ジーンズのミニショートパンツ。

「おまたせ〜♪」

目が点の二人に、まさか⁉️とスマホを見る。
10:00 の予定通り。

(ホッ)とする咲。
そこではない💧

「さ、咲さん。今日も素敵です❣️」

「昴、悪いことは言わん。やめとけ」

「ん、何?」

「イヤイヤなんでもねぇ💦ところでなにを探すつもりだ?」 

車の中から話す富士本。

「とりあえずスタートは現場でしょ❗️ここが終点なら、ここから軌跡を探すのよ」

と言いながら、辺りを確認する。
(バスはあちらから、宅配便も。二人はあのネカフェから、会社はあそこ…千佳の車はそこ)

富士本の車が停めてある。

「車の中から、見えるか確認するわね、昴手伝って、まずはあそこのミライって会社へ行って、富士本さんに確認を」

そう言って、走り出す咲。

咲は、ネットカフェの前に行き、電話をした。
「見えねぇ」
(中央分離帯の生垣(いけがき)で無理かぁ)

少し歩いて、駅への信号待ちに入る。
「見えねぇぞ」

道路を挟んで昴も✖️の合図。

「これから、二人で別の横断歩道から駅側へ渡るんで、見えたらクラクション鳴らして」

信号が青に変わった。

昴が渡り始めると、直ぐにクラクションが鳴った。

咲の方は、横断歩道の真ん中辺りに来ると、やっとクラクションが鳴った。

その位置から車を見る咲。
(ふ〜ん、やっぱりね。次は…と)

「富士本さん、昴、ネットカフェ前に来てくださいな」

そう叫んで、渡りかけた横断歩道を引き返す。

車を立駐に停めて、二人がやって来た。

「ここが、咲さんの最初の疑問だね?」

「はい。…って、何で知ってんの⁉️」

「監視カメラ映像を見た時の反応でね」

恐るべし富士本…と思う咲。

「それは、不倫を見抜いたからじゃなかったんですか?」 と昴。

「不倫の証拠なんて、無くても分かってるし、それより傘がね〜」

「傘?」

「会社から来た時は、彼は黒い大きな傘で、彼女は高そうなベージュの傘。さすがに相合傘ってわけにはいかないわよね。でも、出る時は彼の腕につかまり、黒の相合傘だったのよ」

「それが何か?」まるで分からない昴。

「現場の遺留品や、回収品には、ベージュの傘の切れ端すら無かったの」

「忘れたんじゃないですか?ラブラブで」

「あんな高そうな傘を?…普通ならないわね。でも念のため、復旧した後の映像を確認したら、やっぱりこの傘立てからは消えてた」

「その間に誰かが盗んだとか?高そうならありえるんじゃありませんか?」

「もしくは…誰かに貸した…か」
 富士本が咲を見て呟いた。

「それね。で…貸すとしたら知り合いだと思うのよ。そしてその誰かは、駅側からじゃ無くて、こちら側から、つまり後ろから来た誰か」

「なぜ、後ろからなんです?」

「横断歩道を駅から来たなら、千佳も気づいたはず。知り合いなら、千佳も知ってる人物である可能性が高いと思うんだけど…」

「咲、七海だと言いたいんだな?」

「あんな酷い事故なのに、未だ目撃者が出てこないってことは、雷雨のせいで周りにも人はいなかった…と考えると、確実にあの場にいた七海しか思い浮かばないのよね」

自分の勘が信じられないのは、初めてのことであった。

天を仰ぎかけた咲の視線が止まる。

「富士本さん。見つけちゃったかも」

「はぁ?」

同じ方向を見る二人。