「まあ、あの女達が何かしてくる事もないか」
「どういう意味?」
あさみが頬杖をついて言った言葉に首を傾げる。
「あの女達も本物の馬鹿じゃないってことよ。というか本物の馬鹿だったらとっくにこの街から消えてる。あの場所に居ることすら出来てないしね」
「益々意味がわからないよ」
「つまり、一階のソファー席に座れるのは千鶴さんに許された人間だけ。素性もわかってる人。それに⋯前は連れて歩いている人は大体あそこにいる女達だったし」
「うん⋯」
「皆三人とお近付きになりたくて仕方ないのよ、だけどちゃんと自分の身の程もわかってるの。あそこにいる女達は」
「身の程?」
「千鶴さんは自分達とどうこうならないって事を理解してる。⋯雪乃にこんなこと言うのはどうかとも思うけど⋯」
「いいよ、言って」
言いづらそうに目を逸らすあさみに大丈夫と頷く。
「うん。⋯千鶴さんと寝たり出来てもそれは遊び。それをちゃんと理解してる。あそこに座れたからって、相手に選ばれたからって夢を見ない。調子に乗らない。身の程を理解してる、そんな女達なの」
「うん⋯」
「中には勘違いして馴れ馴れしくしたりした人も居たらしいけどそんな人は皆消された」
「消されたって⋯?」
「この街から追い出された。有馬の力ならそれくらい簡単でしょ?」