若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする

「開けますね?」

 響子さんは焦点の合わないどころか、目をつむったかと思うとうっすらと開けるという、立ったまま今にも眠りに落ちそうな状態。
 朝だしここで失礼しようと思っていたけど、このまま置いていくのはまずい気がする。もし僕がここで帰ったら、響子さん、玄関先で寝ちゃうんじゃないだろうか?

「んー。……響子さん、少しだけ入りますよ?」

 ドアを大きく開いて先に響子さんを通してから、自分も中に入る。

「お邪魔します」

 玄関先で眠り込むのではないかと思っていた響子さんは、意外にも洗面所に直行して丁寧に手を洗った。すごいな、これは多分職業柄だなと思った次の瞬間、響子さんはベッドに直行して上着も脱がずに倒れ込もうとした。

「ちょっと待って」

 慌てて響子さんの身体を受け止めて上着を脱がせる。響子さんはされるがままだった。
 なるほど、先週の金曜日もこうやって掛け布団の上に寝たのか。部屋まで入って本当に良かった。いくら上着を着ていると言っても、まだ肌寒い季節だ。布団もかぶらず寝たら、また風邪引くよ、響子さん。
 上着を脱がせ終わり、布団をめくって、

「はい、どうぞ」

 と響子さんをベッドに寝かせて布団をかける。
 それじゃあ帰るかと思った瞬間、気がついた。

「しまった! 響子さん、ごめん。玄関の鍵、閉めなきゃ!」

 そう。家主である響子さんがベッドで眠ってしまったら、部屋の鍵が閉められないのだ。