「それで、そろそろお話を伺いましょうか?」


明奈が切り出す。


「単刀直入に聞く、どれだけ待てる?」


「そちらからのお返事を?」


「そうだ。」


滝は真っすぐに明奈を見る。


「お陰様で、あのモールは、出店希望の企業やショップさんからの問い合わせが多くて。嬉しい悲鳴なのよ。」


「あの立地なら当然だろう。にも関わらず、ウチにはそちらから声を掛けてもらった。その点は、本当に感謝しているよ。」


「まして、1Fは当たり前だけど、はっきり言って奪い合い。私たち担当の間でも、競争になってる。有力なテナントと契約が結べれば、それが私たち個々の実績になるからね。」


「・・・。」


「だから、みんな虎視眈々とあの場所を狙ってる。正直に言えば、寝具を1Fに入れることには反対も強い。1Fにはそぐわない、3Fで充分、むしろ3Fの方がリトゥリさんにとってもメリットが多いはずだなんていう人もいる。そのくせ、自分はちゃっかり他の寝具ショップと話をしたりしてるんだけどね。」


明奈は笑う。


「それでも今のところ、チ-フの宇田川が私を支持してくれてるから、今なら問題なく、そちらで行ける。どうもあの人、相当なリトゥリファンらしいよ。」


「それはありがたいな。」


その言葉に、滝も笑顔になるが


「だけど、逆に言えば、リトゥリ推しは私と宇田川チ-フだけ。そういつまでも待てないよ。」


と言われて、その笑顔もすぐに消える。


「杉浦も言ったはずだが、今ウチは、基本的に寝具オンリ-の出店はしていない。まして、今回のスペ-スでは枕を中心とした、まさに『ショップ』にならざるを得ない。この話は既に上にも上げてある。みんな喜んでいるが、それはあくまでフルスペック店舗をノーマルに上層階にと思っているからだろう。いや、正直言えば、杉浦も報告を受けた俺もそう思っていた。」


「・・・。」


「だから、君からの提案を杉浦から聞いた時は驚いた。だが担当の彼女は絶対に1Fに出店すべきだと言い切った。あの立地、あの客層なら、それでも十分行けると判断したんだろう。だがこれは大きな方針転換だ、当然上を説得しなければならない。杉浦がプレゼンの準備をしてくれてるが、とにかく時間が欲しいんだ。2週間、いやせめて1週間、なんとかならないか?頼む。」


そう言って、滝は頭を下げる。それを見た明奈は、少し驚いた表情になった。