一夜を泣き明かした明奈は、気を取り直し、雅也の行方を捜した。が、昨夜同様、連絡は全くつかず、雅也の両親は口止めされているのか、それとも本当に何も聞いていないのか、わからないの一点張りだったし、共通の友人知人に虱潰しに当たっても、誰も何も知らなかった。


会社に連絡しても、今日から1週間休暇を取ってると聞かされ、奥さんはご存じなかったんですかと、逆に聞き返される始末。雅也の覚悟に、明奈は震えた。


その雅也は、あるウィ-クリ-マンションにいた。電話は着拒、LINEもブロックして、完全に妻との連絡を絶った雅也は、離婚成立まではここで暮らすつもりだった。


『で、これからどうするの?』


そこに連絡して来たのは、幼なじみで兄慎也の婚約者でもある中島(なかじま)咲良だった。


「もちろん離婚する。もう明奈とは暮らしていけない。兄貴の知り合いの弁護士に相談して、間に入ってもらうことになってる。」


『それは聞いてるし、雅也の気持ちはもっともだと思うけど、でも実際に雅也、明奈さんが不倫してる証拠らしい証拠、置いて来た写真と通帳以外、全然持ってないんでしょ?これじゃむしろ離婚を切り出した雅也の方が有責ということになりかねないって、慎也さんも心配してたよ。』


「わかってる。だけど今更証拠集めなんて、俺の精神がもうもたない。明奈の最後の良心に期待するよ。」


『バカ。そんなの期待できるような人なら、最初っから不倫なんてしないでしょ。』


「そうかもな、ハハハ・・・。」


(まさか、この期に及んで、この世の中に本当に悪い人なんかいないんだから大丈夫なんて、言い出さないよね・・・。)


呑気に笑っている雅也に、咲良は呆れていた。


実際相談を受けた弁護士も、とにかく離婚したい、それも妻と会わないで離婚したいと主張する雅也に、調停に持ち込まれたら到底勝ち目がないと、頭を抱えていた。


それでも、依頼を受けてしまった以上はと、明奈に接触してみると、彼女はあっさりと自分の不貞を認め、どんな償いでもする、罰も受ける、相手の男に制裁を加えたいのなら、全面的に協力する。だけど離婚だけは許して欲しい、直接謝罪したいから、夫に会わせて欲しいと、涙ながらに訴えた。話は平行線だった。


そんな中、村雨美和から会いたいという連絡があり、雅也が籠城していたマンションを出たのは、休暇3日目。


「まさか、明奈を連れて来るなんて真似はしないよな?」


雅也が、事前に釘を刺すと


『そんなことはしないから、安心して。』


美和は約束した。