この日、三友コーポレ-ション本社を訪ねた友紀は、担当の紀藤明奈から、現時点での出店予定企業のリストと、具体的な店舗配置案つまり、どの店がどこのフロアのどの場所に出店するかの案、もしくは出店側の希望が書かれたものを見せられた。


「今の段階で、こんなものを見せていただいて、よろしいんですか?」


友紀が驚くと


「構いません。私がお話させていただいてる企業様には、全てお見せしています。ましてリトゥリさんは、先日、弊社の宇田川が申していた通り、核テナントの1つと考えておりますから。」


明奈はそう答えて、優しく微笑んだ。


「ありがとうございます。」


その笑顔につられたように笑顔になった友紀は、礼を述べると、目の前の書類に目を落とす。


「ご存じの通り、一般的に集客力の関係で、ショッピングモ-ルの下層階では食料品やフードコ-ト、あるいはファッション関係のショップがメインになり、いわゆる住居関連品や紳士ファッションのお店が上層階に配置されます。今回も基本的なコンセプトは、そうなりますが、昨今の『睡眠の質』に対する消費者のニーズの高まりは、相当高いレベルにあると、私どもは認識しています。リトゥリさんの寝具は、そのニーズの高まりに、充分対応されている商品だと思います。」


「ありがとうございます。」


「ですから、弊社といたしましては、是非今回リトゥリさんには、メイン商品である寝具商品のショップを1Fに出店していただければと考えております。」


「寝具オンリ-ですか?」


その言葉を聞いた友紀の表情が曇る。


「確かに社名の通り、弊社にとって寝具はいわば祖業です。大切な商品であることも間違いありません。ですが、現在私どもは寝具だけでなく、インテリア、家具を含めた、暮らしの総合プロデュ-スをコンセプトにしています。近年の出店も全て、そのコンセプトのもとで行って来ています。ですので、今寝具だけのお店を出すことは、正直会社の方針としても、難しいと思います。」


友紀の説明に


「御社のお店は、私も何度か利用させていただきましたが、現在の御社のフルスペックショップは、残念ながらスペ-ス的にも、周囲のショップとの関連性から言っても、1Fでは無理だと思います。」


明奈は難しい顔で答えた。