しかし、明奈の仕事はますます忙しくなり、帰りは0時近くなんて日も出て来た。出張、更には休日出勤までが加わってきて、2人で過ごす時間はますます短くなって行った。


「雅也、ごめんね。今、私、新しく立ち上がったプロジェクトのメンバ-になってて。このプロジェクトの目途が付いたら、絶対に落ち着くから。だから・・・本当にごめんね。」


心底申し訳なさそうに言う明奈に


「俺は君の会社のことはよくわからないし、君の頑張りに水を差したくはないけど、でもこの状況はあまりにも酷くないか?俺はとにかく、君の身体が心配なんだ。女子社員に対して、あまりにも配慮がないよ。」


雅也は憤る。


「ありがとう。でも今は女子とか男子とかはあんまり関係ない世の中だし、女だから・・・なんて言われるのも悔しいから。雅也の気持ちは本当に嬉しいし、迷惑かけてるのは心苦しいけど、でももうちょっと頑張ってみる。」


「そうか・・・わかったよ。明奈がそう言うなら、俺は全力で応援するだけだから。」


「雅也・・・ありがとう。本当にもう少しで終わる・・・はずだから。よろしくね。」


そう言って、甘えるように身体を寄せて来た明奈を抱き寄せ、雅也はその可憐な唇に、自らのそれを重ねた。


そんな会話を交わして、数日経った頃だった。仕事を終え、夕飯の買い物を済ませ、家に戻った雅也の携帯が鳴った。明奈からだった。


「もしもし、お疲れ。」


『お疲れ様、雅也はもう家?』


「ああ、今着いたところ。どうした?」


『うん・・・実は今日も急に残業になっちゃって・・・。』


「えっ?今日は早く戻れるって言ってたから、いろいろ買い込んで来たのに・・・。」


思わずそう言ってしまう雅也に


「そうだよね、本当にごめんなさい。悪いけど、たぶん、遅くなるから・・・ご飯も食べて帰ることになると思うから・・・もっと早く連絡出来ればよかったんだけど、本当に急に決まったから・・・。」


申し訳なさそうに答える明奈の声を聞くと、雅也も何も言えなくなる。


「わかった、そういうことなら仕方ないよ。じゃ、頑張ってな。」


『ありがとう、じゃ・・・。』


通話が切れると、雅也はフッとため息を吐いた。


(なんか最近、このパタ-ン、多いよな・・・。)