この日の店舗開発室のアフタ-5の話題は、当然、着任初日から強烈なインパクトを一同に与えてくれた新室次長が独占した。


「なんなの、あの男!」


友紀や葉那たち女子グル-プの席では、無能呼ばわりされた挙句に、仕事を取り上げられた高木が荒れている。


「なんか急に哲学めいたことを言い出したと思ったら、信じられないこと言ってましたもんね。」


葉那の言葉に他の面々も頷いている。


「確かに他の連中もいろいろ言われてはいたけど、完全に私だけ目の敵にされて・・・なんだかわからないけど、結局女性蔑視じゃない。」


「今どき、あんな露骨に蔑視を口にする人がいるんですね。驚きました。」


「いや、あれは蔑視じゃない。敵視だよ。」


「そうだよね。きっとさ、モテないあまりに女が憎くて、仕方ないんじゃない?」


「あんなの誰からも相手にされなくて当たり前。自業自得なのに、逆恨みもいいとこだよね。」


「ホント、ホント。」


そんなこんなでキャッキャと盛り上がっている同僚たちに


「あんた達、笑い事じゃないんだからね。」


開発室の女性社員最年長で、いわば「女子のドン」的存在の高木には、室長も前の次長もだいぶ気を遣っていた。そんな彼女の厳しい表情と口調に、座はサッと静まり返る。


「とにかくあの男、許せない。絶対にこのままにはしないからね。」


怒りを露にする高木に、周囲はコクコクと頷くしかない。


「でも友紀も大変だね。あんなのと一緒にやらされることになっちゃって。」


すっかり重くなってしまった空気をなんとか変えようと、葉那が友紀に声を掛ける。


「はい・・・。」


ここまでおとなしく聞き役に回っていた友紀は言葉少なに頷く。


「友紀、あんたアイツに変なこと言われたり、やられたりしたら、すぐに報告しな。我慢なんかすることないからね。」


「そうだよ。ある意味、セクハラ親父以上にタチ悪い女の敵だよ、あの次長。」


「早々にやっつけちゃわないとね。」


そんなことを言い合っている同僚たちを見ながら


(確かにやばい人かもしれないけど、でもそんな人がなんで栄転なんか出来るのかな?室長も特に釘を刺してる様子もなかったし・・・。)


友紀は疑問に思っている。とにかくまだ初日が終わったばかり、先は思いやられるけど、あんまり先入観は持たないようにしよう。とりあえず、心に決めた。