こうして、憧れのマドンナと恋人同士になった雅也。


天にも昇る心持ちになる一方で


「なんでよりによってお前?」


という非難ややっかみを受けないかと気が気ではなかったのだが、いざサークルの仲間たちに報告すると


「やっとか。」


「おめでとう。」


と概ね、好意的な反応で、雅也は拍子抜けだった。


それどころか、実はあの時、酔った明奈を雅也に押し付けたのは、明奈本人を含めた全員が示し合わせていたからだと聞かされて、思わず耳を疑った。


「一所懸命にアピってたのに、鈍感な誰かさんは全く気が付かないから、明奈はすっかり落ち込んじゃって。見るに見かねて、あれを計画したんだよ。」


と話してくれたのは村雨美和だった。


「女子は明奈を応援したい一心だったし、男子は『よりによって、あんな唐変木に紀藤をさらわれるなんて、やってない』ってブーたれてたけど、それこそいくら自分たちがアピっても振り向こうともしない明奈が、あんなに雅也を想ってるなら仕方ないって諦めたんだよ。」


と言って笑う美和に


「そうだったのか。なんかみんなに迷惑掛けちゃったんだな・・・。」


申し訳なさそうに美和に言った雅也は


「でも、わかんねぇ。」


と言い出した。


「なにが?」


「明奈はなんで・・・そこまで俺なんかのことを・・・?」


「わからない?」


「正直、ずっと考えてるんだけど・・・全然。」


そう言って、雅也は首を振る。


「明奈はね、君の人柄に惚れたんだよ。」


「えっ?」


「明奈、前にこんなこと言ってた。『みんな、私の外見で、いろいろ言って来るけど、内面を見てくれる人なんて全然いない』って。私なんかに言わせれば、贅沢だと思うけど、でもモテる子にはモテる子なりの悩みやコンプレックスって、やっぱりあるらしいよ。」


「・・・。」


「男子からは過度にもてはやされて、それが原因で一部の女子からはやっかまれたり、反感を買ったりで、高校時代はそれで、結構辛い思いもしたみたい。大学に入れば、環境も変わるしって期待してたみたいだけど、結局また同じことが繰り返される気配になって、失望しかけてた時に、雅也があの子の前に現れたんだよ。」


「俺?」


「そう、雅也は明奈を特別扱いしなかった。必要以上にちやほやもしなかったし、媚びようともしなかった。本当に自然体だった。それがまず明奈には新鮮だったみたい。それに、君の得意なセリフ、『この世の中に本当に悪い人間なんか1人もいない。』あのクサい言葉を堂々と照れもせずに口にする雅也の真っすぐなところに明奈は惹かれたんだよ。」


「クサいとか言うなよ。俺は本気でそう思ってるし、それに明奈に相手になんかされるはずないってハナから諦めてただけだから・・・。」


ボソボソと言う雅也に


「無欲の勝利って奴だね、雅也。」


「村雨・・・。」


「とにかく君は自分の力と魅力で明奈をゲットしたんだよ。それは間違いないんだから自信を持って、でも油断しないで、明奈が離れて行かないように、大切にしてあげて。」


そう言って、美和は笑った。