新体制になって、あっという間にその週は過ぎて行き、迎えた土曜日。仕事で疲れた身体を休ませようと、友紀はノンビリと自室で過ごしていた。そこに母の優美が顔を出し
「友紀も午後は出掛けるって言ってたわよね。」
と確認して来た。
「うん、友達と会う予定なんだ。」
「じゃ、私もお父さんとちょっと出掛けて来るから。」
弟の賢一は大学の講義、妹の美紀は、会社の2年先輩である彼氏とのデートで既に出掛けていた。
「そうですか。それはそれは、ごゆっくり。」
冷やかすような娘の言葉に、はにかみながら
「ありがとう。」
と言って優美は出て行く。既に銀婚式も過ぎた熟年夫婦だけど、2人きりの時は、今だに名前で呼び合っているほど仲睦まじい両親。
子供もほぼ手が離れ、2人きりの時間をまた楽しむようになった両親の姿が、友紀には微笑ましくも羨ましい。
一足先に出掛けた両親を見送り、友紀が家を出たのは、それから1時間程経ってから。
最寄り駅に徒歩で向かう途中、見えて来るのが「鈴の森幼稚園」。ここはかつて幼い頃の友紀たち三姉弟が通った幼稚園であり、また母優美が若かりし頃、勤務していた幼稚園。つまり両親の出会いの場でもある。
この日は何か行事があったようで、土曜日にも関わらず、園には賑やかな声が飛び交っていた。
どうやら、ちょうどその行事が終わった直後のようで、園児たちが保護者と三々五々、帰宅の途に着いている。
「せんせい、さようなら~。」
元気いっぱい挨拶して、両親と手を繋いで歩き出す園児たち。
毎日のように、ここを通り掛かっても、朝は園児たちはまだ揃ってないし、帰宅する頃には幼稚園はとうに閉まった後。案外、園児達の姿を見る機会は少ない。
大学生の頃は、自らの母園であるこの幼稚園でアルバイトをし、母の後を継いで、そのまま就職することを勧められたくらいに子供好きの友紀は、思わず足を止めて、その光景を眺める。
「陽葵、お帰り。」
そんな友紀の耳に1人の父親の声が入って来た。その声には聞き覚えがあった。思わず、その方を見た友紀は
(えっ?)
驚いたように固まってしまう。
「友紀も午後は出掛けるって言ってたわよね。」
と確認して来た。
「うん、友達と会う予定なんだ。」
「じゃ、私もお父さんとちょっと出掛けて来るから。」
弟の賢一は大学の講義、妹の美紀は、会社の2年先輩である彼氏とのデートで既に出掛けていた。
「そうですか。それはそれは、ごゆっくり。」
冷やかすような娘の言葉に、はにかみながら
「ありがとう。」
と言って優美は出て行く。既に銀婚式も過ぎた熟年夫婦だけど、2人きりの時は、今だに名前で呼び合っているほど仲睦まじい両親。
子供もほぼ手が離れ、2人きりの時間をまた楽しむようになった両親の姿が、友紀には微笑ましくも羨ましい。
一足先に出掛けた両親を見送り、友紀が家を出たのは、それから1時間程経ってから。
最寄り駅に徒歩で向かう途中、見えて来るのが「鈴の森幼稚園」。ここはかつて幼い頃の友紀たち三姉弟が通った幼稚園であり、また母優美が若かりし頃、勤務していた幼稚園。つまり両親の出会いの場でもある。
この日は何か行事があったようで、土曜日にも関わらず、園には賑やかな声が飛び交っていた。
どうやら、ちょうどその行事が終わった直後のようで、園児たちが保護者と三々五々、帰宅の途に着いている。
「せんせい、さようなら~。」
元気いっぱい挨拶して、両親と手を繋いで歩き出す園児たち。
毎日のように、ここを通り掛かっても、朝は園児たちはまだ揃ってないし、帰宅する頃には幼稚園はとうに閉まった後。案外、園児達の姿を見る機会は少ない。
大学生の頃は、自らの母園であるこの幼稚園でアルバイトをし、母の後を継いで、そのまま就職することを勧められたくらいに子供好きの友紀は、思わず足を止めて、その光景を眺める。
「陽葵、お帰り。」
そんな友紀の耳に1人の父親の声が入って来た。その声には聞き覚えがあった。思わず、その方を見た友紀は
(えっ?)
驚いたように固まってしまう。