「どういうことですか?」


その紙を手に取ると、友紀は滝の顔を見る。


「そのリストに載っている企業やオーナーが、恐らくは高木が『本当に』抱えていた取引先だ。」


「本当に?」


思わず友紀は、オウム返しのようにそう口にする。


「お前、どう思った?」


「えっ?」


「これが前任者が抱えていた物件の一覧だって言われて、リスト渡された時。」


「こんなにあるんだって、思いました。」


「そうだろ?」


友紀の答えに、滝は頷いた。


「俺もそう思った。なんで、彼女はこんなに担当物件を1人で抱えてるんだろうって?。それが第一に浮かんだ疑問だった。だってそうだろう、杉浦。俺達はホームメ-カ-でも不動産屋でもない。俺達は自社の商品を売るのに適したスペ-スを探してるんだ。集客が見込めない、立地がよくても、広すぎて、ウチの販売店では使い切れない・・・そんな場所は俺達には無縁の物件だ。違うか?」


「いえ。」


「もちろん、出店候補地を探しているのはウチの会社だけじゃない、そんなことはわかりきっている。競争があり、義理人情もあり、相手の売り込みに無下にノ-とも言えず、結果として自分の担当物件が玉石混交になってしまうことがあるのもわかる。」


「はい。」


「だが、開店後の収益が大いに見込める物件である玉と、その逆に成功が見込めず、店を立ち上げても赤字を垂れ流し、会社のお荷物になる見込みが高い物件である石の判断は、ある程度調査すれば容易につくはずだ。ここにいる社員は店舗開発のプロのなんだろうから。」


その滝の言葉には、友紀は頷かざるを得ない。


「まして高木は、開発室でのキャリアは上から数えた方が早いほどのベテランだ。だがそんな彼女が抱えている案件は、数ばかり多くて、はっきり言って石ばかりのように俺には見えた。」


「・・・。」


「室次長は室長の下で、各商談を統括するのが仕事のはずだ。その為には、当然自ら現場にも頻繁に足を運ばねばならない立場だろう。しかし、前任者を悪く言いたくはないが、どうやら彼はそういうことを怠って、みなにそのほとんどを丸投げして来てたように見受けられる。結果、いかにも仕事を抱えているようなポーズをとってるだけの者が見逃されることになった。違うか?」


そう言って自分に視線を注いだ滝に


「それは・・・私にはなんとも言えません・・・。」


困惑の表情で友紀は答える。