こうして、和やか過ぎる顔合わせが終わり、雅也が友紀の家を辞したのは、2時間ほどが経った頃だった。


「正直、こんな歓迎していただけるとは思わなかった。」


緊張がようやくほぐれ、ホッとしたように言う雅也に


「ウチの家族はマーくんと、初対面じゃないからね。」


友紀は笑って言ったが、すぐに表情を戻すと


「でもマ-くん。念の為、もう一度言っておきますけど、私はマ-くんからまだ、何にも言われてないんだからね。」


少し不満げに念を押す。


「わかってる。行きに早くパパになれだの、転勤は一緒に付いて行くとか、しっかりアピ-ルされてた気もするが、それとこれとは話が別だもんな。」


「マーくん!」


ようやく、いつもの調子になって来た雅也。そんな彼と肩を並べて歩きながら


「でもよかった・・・。」


友紀はポツンとつぶやくように言う。


「うん?」


「お母さんの娘に生まれて。だって、そのおかげで、ウチの家族はマ-くんとすぐ仲良くなれたし、私もマ-くんに好きになってもらえた。」


「ちょっと待て。」


「えっ?」


友紀がハッとして横を見ると、雅也が厳しい顔をして、こちらを見ている。


「お前、今の本気で言ったのか?」


「マ-くん・・・。」


「お前、まさか自分が俺にとって、優美先生の代わりだと思ってるんじゃないよな?」


「・・・。」


「そう言えば、前にも『私じゃ母の代わりになりませんか?』とか言ってたし。なぁ友紀、冗談じゃないぞ。」


そう言いながら、真剣な表情を浮かべた雅也は、彼女の身体を自分の方に向けさせると、真っすぐに友紀を見た。