部屋に招き入れられ、友紀の隣に座った雅也は、改めて彼女の両親に向かって


「本日は突然お邪魔して、こんなことを申し上げるのは恐縮ですが、ご縁がありまして、現在友紀さんとお付き合いをさせていただいております。お聞き及びかもしれませんが、私は1度結婚に失敗しております。そんな私が友紀さんにふさわしいのかどうか、何度も逡巡いたしましたが、それでも心美しく、思いやりのある友紀さんに惹かれる気持ちを止めることが出来ませんでした。ご両親からすると、さぞご心配かと思いますが、精一杯友紀さんを愛し、大切にいたします。どうか、よろしくお願いいたします。」


切々と語り掛けると、頭を下げた。


「雅也さん、覚えてますか?」


さすがに呼び方を変えた優美が口を開く。


「私たちの結婚式で、約束しましたよね。いつかあなたが、大切な人と一緒に、私に会いに来てくれるのを楽しみにしていると。」


「うっすらと・・・ですが。」


「まさか、それがこんな形で実現するなんて、さすがに私も思ってもみませんでした。」


優美はそう言って、優しく微笑む。


「姉と私は、子供の頃から、両親の結婚式のビデオを見るのが大好きで、特にあのシーンはいったい何度見たことか。姉は小さい頃から、マ-くんの大ファンだったんですよ。」


妹に暴露されて


「ちょ、ちょっと美紀。」


焦る友紀。


「これも運命なんですかね。」


しみじみと続ける優美に


「雅也さん、私と妻はあなたの人となりを、娘より遥かに前から知っています。あなたになら、安心して娘をお任せできます。どうかよろしくお願いします。」


と、篤が頭を下げるに及んで


「えっ?今日で事実上婚約成立?」


と賢一が驚いたように声を上げて


「賢一、何言ってるのよ。私、マーくんからまだ何も言われてないのよ。」


慌てて友紀が口を挟む。だが


「えっ、お姉ちゃん、本当に雅也さんのこと、マ-くんって呼んでるの?」


美紀にツッコまれ


「いや、さすがにそれは勘弁してくれって、頼んだんですが・・・押し切られました。」


雅也の告白に


「へぇ、友紀姉って、かかあ天下なんだ。意外。」


「友紀にとっては、マ-くんが一番慣れ親しんだ呼び方だもんね。」


弟、母が反応して


「ちょっともう・・・いい加減にして!」


友紀が顔を赤らめながら、声を上げるに至って、また大きな笑い声が部屋に響いた。