「でも、彼女が成長したのは、あなたの指導よろしきを得たからでしょ?」


「どうかな?だが1つだけ言えることは、アイツはいいビジネスマンになれる。君に負けないくらいのな。」


「雅也・・・。」


「アイツは、今回の話を君から聞いた時、とっさに断ってはいけないと感じたそうだ。会社の方針と違ってるにも関わらず。俺だって、話を持ち帰ることが出来たか、自信がない。ここらへんは持って生まれたセンスとしか言い様がない。」 


「・・・。」


「いつまで彼女と一緒にやれるかはわからんが、そんなアイツの成長を見守ってやりたいし、俺に手助け出来ることがあるなら、そうしてやりたい、俺はそう思ってる。」


「それだけ?」


思わず尋ねる明奈に


「ああ、それだけだ。」


滝は、はっきり言い切った。


「そっか・・・。」


なんとなくホッとした表情を浮かべた明奈を、滝は少し見ていたが、やがて意を決したように


「そして明奈。こうやって君と会うのも、今夜が最後だ。」


キッパリと告げた滝の顔を見て、一瞬息を呑んだ明奈だったが


「やっぱりそっか・・・そうだよね。契約も無事完了して、もうあなたにとって、私は用なしだもんね・・・。」


と悲し気に呟く。その表情に滝は、心の痛みを感じなくはなかった。だが・・・。


「今回、こうして君と再会して、久しぶりに一緒の時間を過ごして、安心したことがある。それは・・・今の君が元の、俺がかつて愛した君に戻ってくれてることがわかったことだ。」


「雅也・・・。」


「正直に言う。こうやって何度も2人でいろいろ話しているうちに・・・君への憎しみとか、嫌悪感は消えた。君との時間は心地よくて、いつの間にかこの時間を待ち遠しく思っている自分にも気が付いていた。だけど・・・それだけに逆に『じゃ、なぜあの時・・・?』という思いも強まることになった。」


その滝の言葉に、明奈は思わず目を伏せる。


「明奈のしたことは、あの時、君の口から聞いた弁明で、到底済まされるものでも、納得出来ることでもない。申し訳ないけど、やっぱり俺はもう、明奈を信じることは出来ないし、元に戻ることなど、到底あり得ないんだよ。」


「・・・。」