「私、知ってます。」


「えっ?」


「両親の結婚式のビデオにノーカットで収録されてます。」


「そうなの?」


今度は咲良が驚く番だ。


「私は妹と一緒に、何度もそのビデオを見て、本当に大好きなシーンなんです。両親は、この時のマーくんの言葉で、お互いを生涯愛し抜いて、大切しようと改めて強く誓い合ったって、よく言ってました。」


そう言いながら


(あのマ-くんが、滝次長だったなんて・・・こんなことあるんだ・・・。)


確かに滝の名前は雅也、しかしさすがに結び付くはずもない。友紀は運命のいたずらのような現実に、ただ驚くしかない。それは、咲良も同じだったが、やがて


「そういうことか・・・これで、全部つながったね。」


としみじみと言った。


「咲良さん?」


「さっきさ、雅也とあんたの初恋の人に友紀ちゃんが似てるって話をしたって言ったよね。その時の雅也の答えはこうだった、『お前もそう思うか?』って。雅也は・・・気が付いてたんだよ。あなたのこと、あなたが自分が大好きだった人の娘さんだって。」


その咲良の言葉に、友紀は驚いた表情を浮かべる。


「咲良さん、私・・・次長に振られちゃったんです。」



「えっ、友紀ちゃん、雅也に告ったの?」


驚く咲良に


「はい。だけど、全然相手にもされませんでした・・・。」


そう言うと、悲しそうに目を伏せる友紀。その彼女をしばらく見つめていた友紀は


「実はね・・・雅也、最愛の奥さんに裏切られたのよ。」


意を決したように語り出したが


「それも・・・知ってます。」


顔を上げて、そう答えた友紀に、咲良は息を呑む。


「でも、次長はその元奥さんと再会されて・・・恐らく今も定期的に会ってらっしゃいます。」


「ちょっと待って。雅也が明奈さんと・・・そんなのあり得ないよ。だって、それまで『この世の中に本当に悪い人はいない』なんて言ってたアイツが、あの女の裏切りで、すっかり人が変わってしまって・・・。」


「やっぱりそうなんですね。次長は私に、はっきりおっしゃいました。『とにかく俺は女に限らず、人を信じることに疲れた。』って。でも次長は結局、紀藤さんと・・・。そんな人に負けたなんて私、正直、悔しいです。」


そう言って、とうとう友紀はポロリと涙を流す。