「えっと、天地くんの話だっけ?」


「そうそう!話してたこと忘れるところだった!そうだよ、天地!あんな勉強できるとか意外すぎるんだけど」



確かに今までクラスが違ったから気にしたことがなかったけれど、天地くんはかなり成績が良いらしい。


でもあんなに教え方が上手かった天地くんを思い返せば納得がいく。


だからと言って、机に向かって勉強をしている姿を全然想像することができない。


こんな人を天才と呼ぶのだろうか?



「なんか負けたの悔しい……って、噂をすれば」



話を途中で打ち切った友香ちゃんを不思議に思っていると、ちょうど話題の人物が教室へと戻ってきた。


天地くんがこの時間に戻ってくるなんて珍しい。



「……なに?」


「えっ」



天地くんと目が合ってしまい、男の子らしい低い声で問いかけられ、ビクッと体が反応してしまう。


間違いなく天地くんの目はこちらを向いていて、私に問いかけているのだとわかった。



「あっ……どうしたのかなって……」



無視をするわけにもいかず、小さな声で答えた。