「それにしても、びっくりだよね」
突っ伏していた顔を真逆に向けて、一点を見つめる友香ちゃん。
その視線の先には、もぬけの殻になった天地くんの机。
今日もホームルームが終わってすぐに教室を出ていってしまったから、またあの図書準備室に行っているんだろうか。
このことは天地くんに“誰にも言うなよ”と念を押されたから、友香ちゃんにも話していない。
もちろん、あの日天地くんに勉強を教えてもらったことも。
友香ちゃんにはあの後無事に先生に会えて教えてもらったということにしてある。
親友でもある友香ちゃんに隠し事をしてしまっていることに罪悪感はあるものの、ヒミツを勝手に話すわけには行かない。
「あの天地が数学100点だなんて……って、瑠莉?聞いてる?」
「あっ、うん!聞いてるよ!」
「うそー、今なにか他のこと考えてなかった?」
「えっ……あっ、今日の夜ご飯何かなぁって思って」
「もう、瑠莉は食いしん坊なんだから」
「あはは………」
バレないように適当な嘘をついてしまったけれど、ちょっぴり呆れながらも笑っている友香ちゃん。
上手く誤魔化すことはできたと思う。