目の前の席に座っていた天地くんは、カタッと小さな音を立てて立ち上がった。
もう帰ってしまうんだろうか。
「……っ」
どうしたんだろう、私。
帰ってしまうのが寂しいなんて……
心のどこかで思ってしまった自分がいる。
離れていく天地くんを引き止める勇気もなく、背中がどんどんと小さくなっていく。
また、天地くんと話したい。
男の子と話がしたいなんて思ったのは、いつぶりだろうか。
「……へっ」
私の願いが通じたのか、何故かこちらへと戻って来る天地くん。
心の声が聞こえるはずなんてないんだから、それはありえない。
じゃあ何か忘れ物?
机の上には私の物以外何もないと思うけれど。