「それ、ちょうだい」


「あ、まだ記入終わってなくて……っ、へ?」



てっきり先生かと思って顔を上げると、目の前にいたのはまさかの天地くん。


今日はもう声をかけられることなんてないと思っていた。



「あっ、あの……まだ書けてなくてっ」



まだ席に座っている私と立っている天地くん。


見下ろされているせいか、威圧感を感じる。


ううん、天地くんは怖い人じゃない。


悪い人なんかじゃない。


疑いを晴らしたいと思っている私が怖がっていちゃダメ。


そんなことわかっているけれど、男性恐怖症のせいで勝手に体が震える。



「別にいい、俺が書いて出しとく。じゃあな」


「……っ」



言葉に詰まってどうしたらいいかわからないでいたのに、さらりと私の手からまた日誌を奪い取っていった。


天地くんが日誌を提出してくれる……?


ほら、やっぱり天地くんは悪い人じゃない。



「……瑠莉、やっぱり瑠莉の言ってたこと信じるよ」


「……うん」



またかと心配して私の元へ駆けつけようとしてくれていた友香ちゃんは、天地くんとの一連のやり取りを見て私の言っていたことを信じてくれたようだった。