「そんな煽られたら、どうなっても知らねーぞ」


「煽っ……?」


「例えば───ここにキスしたりとか」



ツーっと人差し指でなぞられた唇。


胸の鼓動がさらにうるさくなった。



「まだ怖がらせたくないからしねーけど。あんま煽んなよ」



そんなに煽ってるつもりなんてないのに。


琥珀くんは私のことを気遣ってくれている。


付き合っている男女なら、やっぱり“キス”とかするんだよね?


琥珀くんの言う通り、まだそれはちょっと怖い。


まだ手を繋いだり、軽くハグするのがやっと。
でも────


琥珀くんはしたいのかな?


琥珀くんもキスしたいって思うのかな?


もしかしたら私のせいで我慢させてしまっているのかもしれない。


そう思うと胸がキューっと締まり、心がモヤモヤして苦しくなった。