「おい、聞いてんのか?」
次に健兄は、琥珀くんの胸ぐらをつかみ出した。
「ねぇ!健兄!ちゃんと話を聞いてよ!この人は私の彼氏なのっ!!」
恥ずかしさなんてどこかへ捨てて、そう叫んだ。
やっと健兄の耳に私の声が届いたのか、ピタリと動きが止まる。
「……か、彼氏だって?」
「そう!琥珀くんは私の彼氏だから離してっ」
健兄の元を離れて、琥珀くんの隣に寄り添う。
琥珀くんは何も言わず、真っ直ぐに健兄を見ていた。
琥珀くんが殴り返さなくて良かった。
ここで喧嘩が始まってしまうところだった。
私がちゃんと話していなかったから。
「瑠莉、この人は?」
琥珀くんがそう呟く。
「健兄は私のお兄ちゃんなの。お兄ちゃんが突然ごめんね、ちゃんと言っておけばよかった……」
「お兄さん……」
未だ放心状態の健兄は、ゆっくりと琥珀くんの胸ぐらを掴んでいた手を離した。
それを確認してからゆっくりと立ち上がる琥珀くん。



