「今すぐ抱きしめたい」
「だ、ダメだよっ、こんなところで!」
誰かに見られたら……恥ずかしい。
「誘った瑠莉が悪い」
「ちょっ、琥珀く……」
「おい!」
琥珀くんダメだよと止めようとした途端。
とても大きな声が住宅中に響き渡った。
「大切な瑠莉に」
何やら声をはりあげて近づいてくる。
視界は琥珀くんの大きな体のせいで塞がれていて、状況が掴めない。
「何やってんだっ!」
気づいた頃には、琥珀くんが殴り飛ばされていた。
「琥珀くんっ!!」
道端に倒れ込んだ琥珀くんは唇が切れている。
誰、こんな酷いことをしたのは。
ハッと顔を上げて、その場にいる人が誰かを確認して驚いた。
「……健兄っ!?」
知っている人で良かったという安心感と共に、サーっと血の気が引いていく。
お兄ちゃんに会ってしまった……
しかも、琥珀くんといる時に。



