「あ、そうだ。新学期そうそう一緒に帰りたいところなんだけど今日は予定があって……」
思い出したように申し訳なさそうな顔をする友香ちゃん。
予定があるなら残念だけれど仕方がない。
「全然気にしないで!それに───」
それに、今日は兄が迎えに行くと言っていた気がする。
そのことを伝えると、友香ちゃんは「それは安心だね」と笑顔を見せた。
「うん……ちょっと過保護すぎると思うんだけれど」
「それだけ瑠莉のことが大切ってことだよ!」
「それは嬉しいんだけどさぁ」
私の兄である相沢 健斗、通称健兄は歳が4つ離れた大学生。
確か今日はちょうど午後の講義が休講になったからって、朝から迎えに来る気満々だった。
私が不審者に会って男性恐怖症になってしまってから、唯一心を許していた異性が健兄で、そんなこともあってか健兄は私のことをすごく心配していた。
時間の許す限り友香ちゃんと一緒に帰れない日は、毎日のように学校まで迎えに来てくれていたんだ。
その気持ちは嬉しいし心強いけれど、もうそろそろ私も“お兄ちゃん離れ”をしなければならないと思っている。



